小賢しい奴め


猫って奴は、目的を果たすためなら手段を厭わない。
タンスの上に登りたいときに、人の背中を踏み台にして上がるくらいの事は簡単にやってのける。
食卓に並んだ刺身が食いたければ、人の目を盗んですかさず咥えて逃げ、隠れて食っている。
そんな横暴を繰り返しながらも「可愛い、可愛い」と愛でて貰える。
何とも羨ましい生き物である。
私も自分家の猫になりたい…





少し話が逸れた。




さて、猫って奴は自分が最も快適に過ごせる方法をよく知ってる生き物でもある。
夏は冷たいフローリングの上に寝そべり
冬はコタツで丸くなる。
寝るとき寒ければ布団に潜り込んで来るような具合である。
そんなウチの猫が超快適スポットを早々に見つけた。
それは、ばーちゃんの寝ているベット。
上にかけてある羽布団がとっても暖かいって分かってしまった。
この部屋は暖房+加湿がなされ、
22〜25度・湿度60弱が常に保たれいてとても過ごしやすい。
おまけに、押し入れにしまわれることなく常時布団がしかれているので
一日中ゴロゴロするのにベストな環境なのである。



とはいうものの、病人の上にかけてある羽布団の上に猫が乗るは良くない。
いくら体重が軽いとはいえ、約3キロの重しがのっかるのはしんどいもの。
猫が邪魔なのは自明の理である。



ベット導入初日は、注意深く観察し
下からのぞき込んだりする程度だったのが
2日目からは上にのっかり、股の間の狭い空間に収まるようにして寝るようになっていた。
経験した事のある人ならおわかりだろうが
猫が足下で寝ていると、人間の方は非常に疲れる。
重くて簡単に寝返りが打てず、翌朝になると腰が痛くなったりする。
ただでさえ弱ってる人間の上に乗るなんて、追い打ちをかけるようなものなんです。



なので、発見した当初は
すぐさま猫を引っぺがし頭を軽くこづいて、低い声で「コラッ!」と怒りました。
怒られた事のほとんど無いウチの猫ちゃんですから
「何で怒られてんの?」って感じできょとんとしてました。
その日は一日、ベットに乗っかる猫を見つけては引っぺがし怒る
の繰り返しでした。



翌日。
奴も学習してきたようで、夜も部屋の隅っこでおとなしく寝て朝を迎えたようでした。
しかし、やはり我慢できなくなったのか
私の居ない隙にまた布団の上に移動してたようなので。
私が戻ってきて部屋のドアを開けると、猫は一瞬私の顔を見て固まり、
一呼吸置いてぴょ〜んと跳躍してベットから降り立った。
その様子を見て思わず笑ってしまった。
上に乗ってはいけないのを理解した上で、快適な場所が忘れられずやっちゃった ってのがバレバレ。
そして、私の顔をみて「怒られる」と逃げたのが、何だかほほえましくて。
この時は怒らず猫を放置しときました。



そんで今日
いつも座布団の上でゴロゴロ寝ている奴が見あたらない。
勿論羽布団の上にも居ない。
しかし、暖房が効いているこの部屋に入り浸りだった奴が
急に居場所を変えるとは考えにくい。
そんな折ベットの足下が異常に膨らんでいる事に気がついた。


サッと布団を引っぺがす。
そこには想像通りに、延びきった猫が寝ていた。
外気に触れて大きなあくびを一発してから、布団をめくった私を見た。
するとどうだ。
見て分かるぐらい大きくビクッ!としてから
首をすくめて、布団の奧に奧にと逃げるように後退してゆくのである。
これには失笑を禁じ得なかった。
そんなに叩かれるのが嫌だったんだな(笑)


ま、そんな些細な抵抗も虚しく引きずり出された猫。
自分が寝ていた場所をしっかり指さし、猫に見えるようにして
「ここ乗ったらアカンわ!」と頭を叩いておく。
そして、奴はすごすごと退散した。



人の目を盗んで上がるだけでなく
布団の間に潜り込んで隠れるなんて
小賢しいじゃないか。
猫は猫なりに考えてるんだなぁ。



今現在、ベットの上には上がって無いようだが
次はどんな手段を講じるのか。楽しみです。