坊ちゃん


坊っちゃん (新潮文庫)

坊っちゃん (新潮文庫)

(小説)


親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。



の出だしであまりにも有名な夏目漱石の「坊ちゃん」
どういう了見で読み始めたのかはさておき、
これがどうして、なかなかに面白い。


生まれてこの方、始めて読んだ夏目漱石の作品が「こころ」だった。
「なんだこのクソつまらない恋慕の話は」と、高校生の時分に感想を抱き
以後、  


    ナツメソウセキ = つまらん文語調の話を書くヒゲ男  


と、正直馬鹿にしておった。
どんな塩梅で読み出したかは割愛するとして、
一旦目を通せば、どうしてなかなか面白い。




当の坊ちゃんはちゃきちゃきの江戸っ子。
坊ちゃんが大きくなって、田舎のガッコの先生として赴任してくる。
関西に住む私には「べらんめぇ調」が判らんので
とらさんに出てくる渥美清の口調で喋ってるのかな(あってる?)と詠むことにした。
これがなかなかテンポ良く喋るし、サクサク話が展開する。



正直者というよりは馬鹿正直で裏表が無く、ちょっとおつむが弱い坊ちゃん。
本人曰く 無鉄砲者 の発言が所々私のツボにはまる。





たとえば



「気狂が人の頭を撲り付けるのは、なぐられた人がわるいから、気狂がなぐるんだそうだ。難有い仕合せだ。活気にみちて困るなら運動場へ出て相撲(すもう)でも取るがいい、半ば無意識に床の中へバッタを入れられてたまるものか。この様子じゃ寝頸(ねくび)をかかれても、半ば無意識だって放免するつもりだろう。」ってのを読めば


 こりゃぁ笑えん。現在に至ってもその気(撲られた人が悪い理論)があるから笑えんな。




とか




「世の中には野だみたように生意気な、出ないで済む所へ必ず顔を出す奴もいる。山嵐のようにおれが居なくっちゃ日本が困るだろうと云うような面を肩の上へ載せてる奴もいる。そうかと思うと、赤シャツのようにコスメチックと色男の問屋をもって自ら任じているのもある。教育が生きてフロックコートを着ればおれになるんだと云わぬばかりの狸もいる。」




  言い得て妙だ。コスメチックな野郎が増えてますわ





とかワケの分からんツッコミをしなが楽しく読んでます。




「文学」などという固い名が付いてるが
そんな堅苦しいもんじゃない。
サクッと読める。
シンプルで分かりすい人間関係や対立がこれまた面白い。
是非読んで見てくだされ