読書感想文 東野圭吾 秘密

予感めいたものなど、何一つなかった。
この日残業をして帰宅した私はリビングのテレビを見ていた。
しかしそれは何かを見たいというものではなかった。
取り立てて気になる番組があるのではない。
これまでの二十数年がそうであったように、
今日もまた親が見ている番組を詳しく見ようとすることなく、
ただテレビの前に座っていた。
だから、ドラマがスタートしたときのシーンもはっきり覚えていない。
また興味も湧かない深夜番組でもやっているのかとだけ思った。
何をやっているか意識をさいて見ようという気は起きなかった。


画面の中で映っているのは、幸せそうな家族の様子だった。
直後にむかえる序破急はまだなのかと、ぼんやり考えていた。






というわけで、すっかりハマって
本屋で東野圭吾の原作「秘密」を買ったオオバヤカヤロウのどくりんごです。
だってだってあのドラマのエンドロールの最後に「第一回」とか書いてあるのですよ。
この時期に毎週決まった時間にテレビの前に居なくてはならないなんて、私には到底無理な事。
しかし続きが気になって仕方ない。
で、どうしたかというのは言うまでもありませんね(笑)


小説をドラマ化した作品というのは、
話が面白ければ面白いほど活字を読んだ方が面白いのですよ。
なに言ってるか分からんだろうが
映像では表現できない、見ているだけでは伝わってこない
各キャラクターの心の機微を読み手にきちんと伝えてくれるのは断然活字ですよ。
あるときは委細を伝え、あるときは巧に隠し惑わす。
物語は王道を進みながらにして、決して全てをさらけ出さない。


ストーリーを予測しては裏切られ、
読み進めながら、思い通りにならないことに苛立つ。
実際ならこうはならないだろうと笑いながらも納得し、
少ししんみりしながら最後を迎え、やっぱり裏切られる。


こうやって読めた本を面白いと言わずしてなんというか。



秘密 (文春文庫)

秘密 (文春文庫)