夢の続き


大きな部屋で目が覚める。
雨戸が閉められた部屋は薄暗く、開いたドアから漏れる光も部屋全体を照らし出すには至らない。
姉や弟達はうつぶせになったり丸くなったり、 思い思いの方を向き布団を蹴散らかしている。
首を右に向けると祖母が寝ていた。
冷たい床の上で横たわっている。
なぜ此処にいるのかと問おうと勢いよく起き上がる。
「おかあさん(私の母)に言わなあかん事があってな。おばあちゃん心配で来たんや。」
呼びかけると、目をつむったままだが返事がかえってきた。
よかった生きてる、と胸をなで下ろす。
でも、「来た」ってどういう事だろう。そこに寝ていたのに「来た」だなんて。
疑問が浮かんだものの、布団の側の床で横になっている様子を見て焦っている私には、物事を十分に考える余裕はない。
そのままで大丈夫か。なんだったら手を貸そうか。と問うても返事はない。
何かできることは無いのかと聞くと
「のどが渇いたから水が飲みたい」と言う。
少し間をおいてから
「そんなことより、お前は何が欲しいのか」と質問を返された。
私は馬鹿正直にチョコレートのビスケットが食いたいと答えながらも
祖母を布団の上に戻そうと近づいた…‥‥






目が覚めた。
此処は私しか居ないいつもの自室。
床に着いてからまだ30分も経っていない
振り子が往復して、カチカチならす規則正しい時計の音が子守歌となって、
目を閉じれば、たちまち眠りの底につく。





ヴィッテルと書かれたミネラルウォーターを持った私は車に乗っていた。
コンビニの駐車場に止めた車中で横になっている。
なぜ車に乗っているのか、なぜ寝ようとしているのかは分からない。
何か忘れているような気がするんだけど…なんだっけ。
徐々に意識が遠のき瞼が閉まる寸前、車をガンガン叩き大きな声で呼ぶ母の声がした。
「あんた、おばあちゃんずっと待っとてやで。」
思い出した。
水を渡そうとしていたんだ。
早くしないと、早く渡さないと喉が渇いてるんだ。
慌てて車から飛び降りた。
看板も照明もなく、陳列棚に商品が一切無い店をコンビニと言うのはおかしいが、気にはしていられない。
走って店の中に入ると、目の前にいた。
目をつむってジーっと座っている。
声をかけたけど、やっぱりっジーっと座っているだけで返事はない。
何度話しかけても返事は無い。いっぱい話そうと思ったけど答えは返ってこない。
どうしようかと辺りを見回すと、傍らの机にチョコレートのビスケットが置いてあった。



いつもとろくさくてご免なさい。何かしてあげたいのに、いつも何もできなくてご免なさい。
いつもして貰うばかりでご免なさい。心配ばかりかけてご免なさい。





しゃくり上げて泣く音で目が覚めた。
自分から発せられた音だと分かって驚いた。
自室でひとり、涙で枕をぬらしている。
しばらく出るものを拭うことなく横になっていると、
時計の時報の鐘が鳴った。
弱々しく音を響かせる事6回。
コーンと6回聞こえた


おかしい。今は午前3時の時報だったはずだ。
この時計は3時なら3回鐘が鳴るだけなのに、6回も鳴るなんてあり得ない。
どうも腑に落ちない。



だいぶ落ち着いてきたので
顔でも洗おうかと洗面所に向かう。
喉も渇いたし、何か飲みたい。
その前にふと気になって仏壇の前に行ってみた。
驚いたことに、いつ仏前に置いたかわからなくなったお茶が御供えしてあった。
汚れてきたない、人間の飲み物で無くなった物体がそこにあった。
慌てて下げて、祖母が使ってたコップに新しいお茶を入れて置き直した。



そっか、この事を言いたかったのかなぁ。